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2020.05.09

ブログ

保育園のにおい

たんぽぽ組の大木です。すこし前、小学校の卒業アルバムを見つけました。私もすっかり忘れていたのですが、将来の夢というページに『保育士になりたい』と書いてあり、30ウン年の時を経て保育園でお仕事をさせてもらえているご縁に感謝しています。
これまで医療・介護の現場で看護師として働いてきましたが、保育園に来て始めに感じた事は“保育園のにおい”でした。今日は嗅覚(におい・かおり)について書きます。

嗅覚について
私たちは普段意識しなくても絶えず呼吸をしています。生まれてから死ぬまで、生命維持には欠かせないのが呼吸です。そして、呼吸することと嗅ぐことは常にセットです。
嗅覚は五感(嗅・視・聴・触・味)の中でも独特な感覚器です。嗅覚中枢は古い脳(旧脳)と言われる大脳辺縁系にあります。太古の昔から動物が生存していくためにはにおいを嗅ぎ、生命の危険を察知する直感力が不可欠でした。現代生活でいうと、焦げたにおい=火事、腐った刺激的なにおい=食中毒、ガスくさい=一酸化炭素中毒などが頭に浮かびます。このように、即座に危険を察知出来るのは、嗅覚が敏感に生命の危機を知らせてくれているからです。そういった俊敏さとは逆に、嗅覚は疲れやすいという特徴も持っています。長時間同じ匂いを嗅いでいるとその匂いがよくわからなくなるというのがその例です。

こころとからだ
嗅覚野の近くには扁桃体という情動や感情をつかさどる場所があります。においの情報が瞬間的に伝わると、心のスイッチを切り替えることが出来ます。心と身体はつながっているので身体機能も切り替わります。例えば、気持ちがもやもやしていた時、スーッとさわやかなオレンジやスパイシーなカレーの香りがしてふっと気が動き、自然と深呼吸になってもやもやしていた事も忘れていたという経験はありませんか?アロマセラピー効果と一口に言ってしまうには広義すぎるかもしれませんが、嗅覚は実におもしろい感覚です。

においの記憶
テーマで、“保育園のにおい”と表現しました。しかし、これは私の記憶の中のもので再現はできません。人間や動物、虫、植物、土や砂場、粘土、絵具、給食などのにおいだけでなく、私の子供時代の体験もブレンドされて“保育園のにおい“という表現になりました。嗅覚には快・不快に関わらず、記憶の引き出しを開けてくれる効果があります。記憶をつかさどる海馬という部位が嗅覚野と同じ大脳辺縁系に属していて関連しています。
子供たちの嗅覚の発達は、さまざまな匂いを嗅ぎ、子供たち自身の感性で感じ取る繰り返しの中で、その時の体験とブレンドされ記憶されます。生まれたての赤ちゃんでも嗅覚は十分に発達しており、大人以上に優れているとも考えられています。お母さんや母乳のにおい、家族の匂い、他人のにおいをかぎ分けているのです。最近は、アロマセラピーの普及もあり、香りを楽しむ商品が沢山ありますが、小さな子供への匂い体験は、子供の目線や身近にある自然な植物や家庭の匂いから段階的にしていくことをお勧めします。においや香りを教えるときは、「あ、何かにおいがするよ。何の香りだろう。」と気づくきっかけづくりの声掛けをします。におい・香りは見えないので、子供が気づくまでちょっと待ちます。その後、「あ、お花だね。」「お出汁だね。」「○○が脱いだ靴下だね。」など、言語化して伝えます。状況も付けも良いです。例えば季節や天気や気温も「雨が降っているね。」「太陽が出ていてあったかいね。」と伝えます。最近ではあまり機会がありませんが危険なにおいも大事です。「ガスの匂い、あぶないね。」「腐っているね、食べたらお腹痛くなるね。」などです。
こうして嗅覚での体験だけでなく、五感で体験して記憶の引出しにしまわれます。

かわいいお顔に♡
さて、私の今の関心はたんぽぽ組の子供たちのお顔や鼻水を拭く事です。先ずは、遊びやスキンシップの延長線上で「鼻水を拭いてもらったら、さっぱりする。」と感じてもらえたらと思いますが試行錯誤しています。お子さんたちの方から、“お鼻拭いてほしい”というサインをもらえる日が楽しみです。

お読みいただき、ありがとうございました。

文責 大木

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