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2019.06.22
ブログ
主任だより
今週、少しだけ年中児クラスに入った際にとっても素敵な場面に遭遇できたので紹介いたします。
年中児が、童具で遊んでいるところです。童具の本を見ながら、何を作るか皆で決めるところからスタート。お城を作ることになり、形や数を意識できる声かけを職員が行いながらまずは土台作り。その後は、一人で黙々と集中したり友達と協力しながら積み上げたりと熱中していました。この時点で、素敵な場面!なのですが…
今回、素敵な場面として紹介したいのは職員の子どもへの関わり方です。
「じゃあ、何作ろうか」と子どもに尋ね、子どもの提案を「なるほど」と頷きながら聞く姿。
子どもが作りたがっているものが手持ちの本にないと分かると、載っている別の本を持ってくる機転と知識。
子どもが「100階建てのビルを作る」と言えば、「そうなんだ、高いビルを作るんだね」と相槌を打って…それを受けて、子どもが「ビルのトイレ作ったよ」と発言をして…。
「高いよー!よっしゃー!」と子どもが飛び跳ねてガッツポーズをすれば、「本当だ、高いね!たくさん積んだねー!」と一緒に喜んでガッツポーズ。
皆がどんどん積んで高くなったお城を崩してはいけないとプレッシャーを感じ、積み木を手に持ったまま置けずにいる子に気付き声をかけつつ、置くよう強要はせず…。
満足した子たちへは給食へ行くよう促し、「まだしたい!」という子たちへは、気持ちを汲んで時間を設け。ただし給食を食べなくてはなりませんから、何分までねと最終時間を決めて。
何気なく行われている関わりですが、子どもの言動に寄り添う応答的な姿勢が、非常に素晴らしいなと私は思いました。
一体何が素晴らしいのか…少し説明をさせてください。
子どもというものは、大人目線で見ると遊びが常に移り変わっていきます。特に子どもの観察が不十分で、子どもの興味に寄り添わない遊びが用意されていた場合や、玩具と場所だけ与えられて放置されている場合は!
例えば、子どもが床でごろごろとしていたとします。その時ちょうど、子どもにとって良い絵本が手に入ったとして、大人はその絵本を子どもに読み聞かせしてあげたくなりますね。子どもは床でごろごろしているのだから、きっと暇なのだろう…と。「〇〇ちゃん、とっても面白い絵本があるよ!おいで」ところが読んでみても、子どもはあまり聞いてない様子。実は、床でごろごろしていたその子は、暇だったのではなく床でごろごろする動きを楽しんでいたのです。
その絵本が本当に良い物だったとしても、子どもの興味が向いてない状態では子どもの成長の実りにはならないというわけです。
ここで子どもにとって良い関わりとは、「床が気持ちいいね(子どもの観察を十分に行った結果、床でごろごろするのが楽しいようだという解釈)」「寝転がってるんだね(子どもの行動をナレーションしている)」「床、どんな感じなの?(yes/noで答えられない質問をし、子どもとの会話を引き出す)」と子どもの遊びに寄り添うこと。更に言うなら、一緒に寝転がって物理的な目線も同じにするとなお良いですね。
とは言えど、子どもの言語化されない興味に気付き、遊びに寄り添った言葉をかけるなんて最初からスムーズには行えません。とにかく、最初のうちは子どもに対して大人が反応すること!
徐々にコツを掴み、いずれは、子どもに向かって話す言葉ではなく、子どもと話す言葉になるわけです。
ちなみに、子どもに向かって話す言葉とは、上記のたとえ話で言うのなら「絵本を見て」と指示をしたり、子どもが実は聞いていないにも関わらず最後まで読み切ってしまったりすることです。指示することが絶対に悪いわけではありません。子どもがごろごろと転がっていく先に画びょうが沢山落ちているとしたら…「止まって!」と指示する必要がありありますね。
では、その言葉すら無かったら?
例えば、職員が積み木だけ渡して後は放っておいたらどうなるでしょう。最初は積み上げるかもしれませんが、高いお城を作って「高くできた!」と言っても、職員は無表情で頷くだけ…もしくは無反応。子どもはあっという間に積み木に飽きてしまい、何の学びも得られない時間になってしまうでしょう。更に言うのなら、子どもに対して大人が無表情・ノーリアクションでいることは、脳に対しても大きなストレスを与えます。(詳しく知りたい方は、”3000万語の格差:赤ちゃんの脳を作る、親と保育者の話しかけ”や”脳を傷つけない子育て”をおススメします)
なので、子どもに対して大人が反応することが大切なのです!
私たちは、保育士として子どもの成長のためにねらいを持って保育しなくてはいけません。子どもとの関わりも、ただ反応するだけではなく、しっかり考えていかなくてはならないと、研修や本で学ぶたびに思います。
そう考えていたところ、冒頭で紹介した職員の子どもに対する関わり、言葉選びを目にすることができ、非常に嬉しく思いました。
さて、説明を踏まえた上で改めて考えてみると…
・「じゃあ、何作ろうか」と子どもに尋ね、子どもの提案を「なるほど」と頷きながら聞く姿。
・子どもが作りたがっているものが手持ちの本にないと分かると、載っている別の本を持ってくる機転と知識。
(子どもの興味を知るため、まずは問いかけからスタート。話をちゃんと聞いていますよというメッセージに、子どもは安心していろんな意見を出せます)
・子どもが「100階建てのビルを作る」と言えば、「そうなんだ、高いビルを作るんだね」と相槌を打って…それを受けて、子どもが「ビルのトイレ作ったよ」と発言をして…。
(同じ言葉を繰り返すのではなく、”高い”と言い換えることで、子どもは高いの概念を知っていきます。相槌を打つことで、子どもは暫くしてから会話を続けようとしています)
・「高いよー!よっしゃー!」と子どもが飛び跳ねてガッツポーズをすれば、「本当だ、高いね!たくさん積んだねー!」と一緒に喜んでガッツポーズ。
(子どもの喜びに共感を示し、”積んだあなたがすごい”という褒め方ではなく、”たくさん積んだ”という過程を認めています。”あなたが凄い/あなたが悪い”という言い方は扱い注意なのです)
皆がどんどん積んで高くなったお城を崩してはいけないとプレッシャーを感じ、積み木を手に持ったまま置けずにいる子に気付き声をかけつつ、置くよう強要はせず…。
(全体を見つつ個々もしっかり見ているからこそ!その後も継続して見守っていました)
満足した子たちへは給食へ行くよう促し、「まだしたい!」という子たちへは、気持ちを汲んで時間を設け。ただし給食を食べなくてはなりませんから、何分までねと最終時間を決めて。
(子どもの気持ちに寄り添いつつの、適切な指示の使い方です)
私もまだまだ勉強中ですので、もっといろんな見方や考え方があるかもしれませんが…ひとまず、今週の主任だよりでした。