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2019.06.20
ブログ
さくら組 チョウの命 ツバメの命
さくら組には、毎日昆虫に没頭する子がたくさんいます。
種類は様々で、チョウ、カナブン、カミキリムシ、シャクトリムシ……なかでも幼虫が大人気です。まだ見えるか見えないかわからないほど小さくて、うっすら透けている産まれたての幼虫の赤ちゃんもたくさん見つけています。
保育園から4つの虫かごを貸し出すことになり、さくら組の教室前に置き場所を作りました。
虫かごの使い方や飼い方のルールも決めました。いくつか紹介すると、
・どんな虫なのか本で調べてから虫かごに入れる
・観察したらその日の夕方には返す
・どうしても育てたいときは先生に相談する
・一度にたくさん育てない。しっかりお世話できるだけ捕まえて育てる。
などを少しずつ決まっていきました。
写真の約束の中にはまだ書かれていませんが
最後に記した約束が決まった経緯として
以前一度に大量の幼虫を同じ虫かごにいれて育てたときに、サナギになる前後でたくさん死なせてしまったという出来事がありました。
子どもたちは、愛着をもって大切にお世話をしていたのですが
糞を掃除したり、餌を追加したりしているときに、逃げ出そうとする幼虫たちを慌てて元に戻してしまい、ついつい(虫たちにとってはとてつもなく強い力で)ギュッと掴んだりしていたと思います。
様々なストレスが重なってか、エサはたくさんあるのに食べなくなり、糞もしなくなり、次第に動きが鈍くなり、弱っていきました。
現在、1匹のチョウのサナギが虫かごの中にいます。(おそらくアゲハチョウの仲間)
先々週に身体をよじらせながら、サナギになる準備をしはじめました。サナギになり緑から茶色に変色してからは、じっとその時を待っているかのように動きません。
そんななか、先週、
さくら組の子たちと読んでね、と
主任が一冊の絵本を持ってきてくれました。
『にわのキアゲハ』
という絵本です。
絵本の内容は、
はじめに38個ものキアゲハのタマゴが見つかりますが、
タマゴ→幼虫→サナギと変化する過程で、
アリやハチやクモ、カマキリたちに食べられて次第に数が減っていき、
最後は2匹だけサナギになるという内容の絵本です。
最後の2匹だけはチョウになってほしい……‼️と子どもたちと一緒に願いながら、ページをめくると、
1匹のサナギの中からでてきたのは、
なんとハチ……‼️
キアゲハが幼虫の頃に、親バチにタマゴを産み付けられ、
そのタマゴが、サナギの中身を食べてしまったのだと説明がありました。
子どもたちと私の願いとは裏腹に、現実の厳しさを突きつける内容でした。
最後の1匹は無事にきいろい羽を羽ばたかせ空へ飛び立つという結末でしたが、読み終わった後の子どもたちが
1匹は生き残って良かった〜
ではなく、
1匹しか残らなかった……
という表情をしていて、子どもたちのなかですごく衝撃的だったことが窺い知れました。
読み終えた後に、
38匹のうち1匹しか生き残らなかったことが、
どれだけの厳しい出来事なのかの例えとして、
さくら組ともも組のみんなが合わせて34人だから、そのうちの1人くらいしか大人になれな程のことなんだよ
と説明すると、「え〜〜!」と、さらに驚き、
隣の子と見つめ合ったり、肩に手を置いたりして、お互いの存在を確認するかのような様子が見られました。
命について考える機会が、火曜日の朝にも起こりました。
さくら組ともも組のお部屋前の廊下の上につくられたツバメの巣から一羽の赤ちゃんが落ちたのです。
まだ、毛もまばらで赤い地肌が見えるような細い細い赤ちゃんツバメです。
おやつを廊下で食べるときに、親ツバメがせっせと巣を作ってとんでいたのを知っており、巣から赤ちゃんが顔を出すようになったのを喜んでいた矢先の出来事でした。
保育士も数人集まり、やや緊迫感を漂わせながらどうすれば良いのか話をしているところに、
さくら組の子たちもやってきます。
いつもなら好奇心いっぱいに、どうしたの〜?やってくる子どもたちが、
状況を察してか落ちてしまった赤ちゃんをそっと見つめる姿がありました。
人間のにおいが付くと、親が育てなくなるなどの情報を知ってはいましたが、
真上に巣があり、手を差し伸べれば巣に返せる状況下で、
私たちはどうしても、目の前の命を見捨てることが出来ませんでした。
話し合った結果、
職員が新しい手袋を二重にして装着した掌に乗せ、巣に返すことにしました。
そして、再び落下したときに少しでも衝撃が少ないようにと、クッション性を高めたダンボールを置きました。
しかし、残念ながらその日の夕方、翌朝と再度落下し、一羽死んでしまっているのが確認されました。さらに、昨日の夕方もう一羽が落下しました。
幸い、今のところ親ツバメが見捨てることなく餌を巣に運んでる姿があります。
ただ、
これらの私たちの選択は、自然の摂理に逆らっている行動だったかもしれない、
私たち人間のおせっかい、そして自己満足な行為だったかもしれない、
もしかしたらツバメにとってはありがた迷惑だったかもしれない、
私たちの行動はこれで良かったのか、どうしてあげればいいのか、とモヤモヤした気持ちが私の中では正直残っていました。
昨日子どもたちとサークルタイムで話をしてみると、
人間のにおいがつくのは良くないとわかっていても、
「動物のお医者さんに連れていきたい」
「長いお箸でご飯をあげたらいいと思う」
「さくら組で大切に育てたかった」
など、なんとかしたいという気持ちやいろんなアイデアを出し合っていました。
これからはこうしよう!
という結論は出せない話し合いでしたが、
確認せずともどの子も命の重みを感じている
空気が流れる、十分価値ある話し合いになりました。
子どもたちのツバメに対する想いを聴いたあと、
勝手ながら、
落下した時に、自然の摂理だから仕方がないことだと命を見捨てなくて良かったと私は感じました。
ツバメの赤ちゃんの死は、悲しい事実ですが、
目の前の出来事や絵本を通じて、
様々な現実を受け止めながらも、命に真剣に向き合う子どもたちの姿から、
知らず知らずのうちに道徳性が芽生え、育まれているのだなと感じました。
子ども達にたくさんのことを教えてもらえたように思います。