お知らせ
2021.09.22
ブログ
銀杏から見る保育者の関わり
以前ブログ「エコ保育所等宣言園」へ申し込みました!にてお伝えした、エコ保育所の認定証が届きました。
エコ保育所として、今後も園庭の豊かな自然環境を大切に保育し、自然(命)への親しみや感謝する気持ちを子ども達へ伝えていきたいと思います。
さて、今回はそんな園庭での出来事をご紹介いたします。
なんか、くさい!
「なんか…くさい!」
職員室にお手伝いをしに毎日訪れる5歳児クラスの子ども達。ある日、やってくる子ども達が眉をぎゅ~っと寄せて言いました。
正体は、通路に落ちているイチョウの実である銀杏です。
実は食べられるんだよ!美味しいんだよーと伝えると、「えーうそ!こんなに、くさいのに!」と信じられない様子でした。
食べた経験がないと、ピンと来ないのでしょう。毎年美味しく銀杏を食べている私としては、独特の匂いをかぐと「夏も終わるなあ~」「塩を振って食べたいな~」と思います。
(昨年のブログ:秋の味覚~モチモチの銀杏~)
※ただし、銀杏は食べすぎ注意です。食べすぎると、嘔吐や痙攣などの症状にみまわれることがあります。
さくら組(5歳児クラス)もも組(4歳児クラス)では、食べる準備を進めているようです。どんな反応をするのか、楽しみです。
先月、以下の三冊の本を読みました。
- 「子どもの目が輝くとき」 和久洋三
- 「センス・オブ・ワンダー」 レイチェル・カーソン
- 「保育の中のアート」 磯部錦司 福田泰雅
子どものアート、子どもの表現について学びを深め、職員同士の話し合いに活かそうと思ったためです。
実際に読んでみると、表現だけの話ではなく、子どもと関わる保育者のあり方について学ぶ内容でした。
奇遇にも、先日のオンライン園内研修(講師:高山静子先生/東洋大学 主催:こどものとも社)でも子どもと関わる保育者のあり方について学ぶ内容でした。
子どもにとって、毎日関わる大人の存在が非常に重要であることを、本や研修から改めて実感する先月から今月にかけての出来事でした。
この学びを元に、銀杏-子ども-大人の関わりについて考えてみました。
主体性を大切にする≠放任
子どもの主体性を大切にしましょうと言われるようになり、数年経ちます。国が示す保育指針にも、子どもの主体性について書かれています。
「子どもが銀杏を食べないと言ったから、食べさせない」これは、主体性を大切にしていると言えば、そうです。
ただし、子どもは自分の経験の範囲内でしか判断できないことを大人は理解しておく必要があります。
銀杏を食べたことが無い子どもにとっては、食べるイメージが湧かない場合もあるわけです。
銀杏を食べたことがある大人が、銀杏のクッキングに誘ってみるといった選択も時には良いでしょう。
教え込むのではなく共に喜ぶ
園庭には、銀杏に限らず色んな木々や花が育っています。虫も鳥もたくさんいます。それらの名前を覚えることは、さほど重要ではありません。
スマートフォンで何でも調べられる時代です。必要なのは、調べよう!と思う気持ちを持つことです。その気持ちは、「興味」
大人が「興味を持って」と言って、興味を持つでしょうか?…難しいですね。
大人が一緒に喜ぶこと、楽しむことが大切だそうです。子どもが、「銀杏、くさい!」と言ったときに「本当だねーなんでだろうねー」と言ってみたり、落ちて積もっているイチョウの葉っぱを舞わせて、「きれいだねー!」「ひらひらしてるねー!」と一緒に喜んでみたり。
「くさいなあ」→「なんでくさいんだろう」 「きれいだなあ」→「なんできれいなんだろう」
興味を持って感じることで、子どもは初めて疑問を持ちます。その疑問が、もう少し大きくなった時に調べよう!考えてみよう!に繋がります。
「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要ではない
子どもたちがであう事実のひとつひとつが、やがて知識や知恵を生み出す種子だとしたら、
さまざまな情緒やゆたかな感受性は、この趣旨をはぐくむ肥沃な土壌です。
幼い子ども時代は、この土壌を耕す時です。
――引用:センス・オブ・ワンダー レイチェル・カーソン 訳:上遠恵子 写真:森本二太郎
まとめ
銀杏ひとつ取っても、保育者の声かけや関わりで子どもの感じ方はずいぶんと変わります。
今はまだ、「くさい!」「きれい!」「たべてみたら、おいしかった」と感じるだけかもしれません。
しかし、大きくなった時に銀杏の香りに気付いて「あ、この匂いは銀杏だ」「そういえば保育園でも銀杏あったなあ。なんでこんな匂いなんだろうな」「食べたらおいしかったよな。どうやって作ったんだろうな」と、思って調べたり、食べようとしてみたりするかもしれません。その経験が、疑問を持ったり、考えたり、自分で調べたりする、「生きる力」に繋がっていくのだと思います。
(「生きる力」…文部科学省 学習指導要領「生きる力」のホームページ)
文責:櫻田