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2024.05.01

ブログ

さくら組 球(ママボール)の造形活動

 はじめに

 新年度がはじまって1か月が経過しました。さくら組(5歳児クラス)の子どもたちは進級し、様々なことに好奇心を抱いて取り組んでいます。私自身も、子どもたちの興味や関心をヒントに、みんなでできたら楽しいだろうな!という活動のヒントを得ています。ご縁があって園生活最後の1年間をともに過ごすことになったさくら組の子どもたちと、年長児だからこそ楽しめる活動を一緒に深めていきたいと思います!

活動のねらい

 幼児期の終わりまでに育ってほしい姿の1つとして「数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚」があります。就学を見据え、子どもたちの数量・図形の感覚を豊かになるような遊びや活動を意識して取り入れていきたいと考えています。高山も、「乳幼児期に必要な経験として小学校の先取り教育をするよりも、手と体を動かし五感をフルに使って、体験のなかで数量・図形の感覚を磨くこと」が大切と述べています。(高山 2022、p.124)

そこで4月は、

・全身を使って〈球〉の特徴を体感する

・球の特徴を活かして自由な表現を楽しむ

というねらいのもと、ママボールを使った活動を行いました。

 ママボールは、錦ヶ丘では3歳未満児が使用しているイメージがあるかと思います。和久洋三も、球体が「最も単純な形体という点でボールは最初に与える童具」(和久 2006、p92)であると述べています。5歳児の子どもたちが、昔から親しみのあるママボールで遊んでみるとどのような活動が展開できるかに興味を持ちました。球体の特徴や本質を感覚的に掴むだけでなく、その特徴を言葉で伝える、整理することなどは年長児だからこそできる活動になると考えました。

実際の活動の様子

1.「転がる」「弾む」ボール遊び

 まずはたっぷり遊ぶことで特徴を体感してほしかったので雨樋とママボールで自由に遊ぶ活動を行いました。

子どもたちは、こちらが何も言わなくても転がす遊びを始めます。雨樋をもち上げ傾けて、上部からボールを手放すと下へ下へと転がっていくということを経験から既に知っており、友達と協力して持ち上げ、より高い位置から転がす方が「よく転がる!」ということにも気付いていました。

 また、タライにボールを入れるゲームをすると、バウンドして入っていくボールの動きから「弾む」という特徴を掴んでいました。

 存分に遊び終わった後に、球の特徴について子どもたちと一緒に注目しました。

球は、どこから見ても同じ形、左右対称を保っている点が特徴です。似ている形としてスーパーボール、バスケットボール以外にも、「時計やタイヤなども似ているよ」と話題になりました。タイヤは、正確には球ではありませんが「タイヤが四角だったら、痛そうだね。進みにくそうだね」と転がるボールの姿との比較から生まれた気付きなども出てきました。

いずれ、小学校での学習のなかで教わる図形の特徴を、遊びや生活で感覚的に掴むということはこういうことなのだろうなと感じました。

 

2.点、線、面を生み出す

 「転がる」「弾む」ボールの特徴を共有した後に、絵具を付けて線や点を生み出す活動を行いました。斜面にボールを転がすと線が生まれることに大興奮の子どもたち。転がす度に生まれる道筋を真剣に見つめていました。

また、腕を伸ばし高いところから落とそうとする姿も数多くみられ、落下の空間の大きさによってボールの速度が変わることを感覚的に捉えているようでした。

他にも子どもたちによる試行錯誤は続き、ボールを強く押し当てると大きな点ができることなど、力加減による変化やボールの弾力性についても気付いているようでした。

3.こいのぼりをボールで描く

 後日、ママボールを筆代わりに、個々にこいのぼりを表現する活動を行いました。おそらく事前に遊ぶ時間を設けずに「ボールを使ってこいのぼりを描いてね」と伝えるだけであれば戸惑う子が続出したことと思います。しかし、遊びのなかで十分ボールの動きの特徴を掴んでいる子どもたちは、経験から得た「知識」を自由に活用して線や点を描いていました。

 上下左右にボールを転がし直線や曲線を生み出す子、ひたすらボールを当てて点で鱗を表現する子、同じ遊びをしたけれども、一つとして同じこいのぼりは生まれませんでした。

おわりに

 遊びのなかでの経験を通して、個々の発見や表現ができていた子どもたち。学ばせよう、理解させようと大人が思わなくても、自ら気付き、試し、楽しむことができる子どもたちの力を改めて感じることができました。球の特徴を活かした活動は、ほかにもたくさんあります。子どもたちの興味などを把握しながら、いろいろな活動を計画していきたいです。

 

文責:椎屋

 

参考・引用文献

和久洋三(2006)『ボール遊びと造形』、玉川大学出版部

高山静子(2022)『保育内容 5領域の展開 保育の専門性に基づいて』、郁洋社

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