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2023.10.30
ブログ
きく組(3歳児)「パン」がテーマのプロジェクト保育①パン作り編
はじまりは子ども達の声
現在きく組では、「パン」をテーマにした活動を中心に行っています。
きっかけは、収穫したトマトのピザづくりからでした。小麦粉への興味が深まり、「小麦粉を触ってみたい」という声や、子ども達が絵本「パンどろぼう」の世界の楽しさを友達と共有する中で「パンを作ってみたい」という意見がありこれまでたくさんのパンを作ってきました。
今回は、テーマ「パン」を中心に展開していくプロジェクト保育について、保育士の視点や子ども達の姿を通してご紹介します。
プロジェクト保育の具体的活動
まず、「プロジェクト保育」とは、1~2か月あるいは長期にわたり設定された「テーマ」に沿って、遊びと直接的な体験を通して主体的に学ぶプログラムです。保育者は、子ども達の活動中の思いや興味から次の活動への広がりや深まりを意識して活動を展開していきます。
保育者としてプロジェクト保育を考える上で強く意識したことは、それぞれの活動が、子ども達にとって魅力的で「ホンモノ」であることです。単に手や身体を使うだけの作業的なものはなく、子ども達一人ひとりの自発的な知的探求心を刺激する活動であるようにと意識しました。きく組で実際に行ったプロジェクト保育は以下の通りです。
【1】ホンモノのパンをつくる
実際に子ども達と4種類のパンを作りました。保育者がはじめに作り方を紹介した後は、ほとんど自分たちの力で成形しました。
「生地がまとまらないぞ…(はじめて作った丸パン)」
「クッキー生地でパン生地を包むには…(メロンパン)」など、
個々に様々な問題に直面するも対処していました。
目の前の小麦粉からどうやってパンを作り出そうかと試行錯誤する姿は、声をかけるのをためらうほど真剣な表情でした。また、「おいしいパンを作れたぞ!食べられたぞ!」という達成感や満足感、パンの美味しさを友達と共有した経験は、後々のおままごとや製作活動に繋がっていきました。(詳しくはパンがテーマのブログ第2弾でお伝えします)
J.デューイは、衣食住の一番基礎的な活動に子どもが全能力を上げて従事するとき、それを「活動的な仕事」と名付けています。作って味わうパン作りの活動は、子ども達の自発的探求心を刺激する内実的価値のある活動だと思いました。
【2】疑問を解決しに園外へ!
パン作りの経験を積み重ね、子ども達からは「もっといろんなパンを作りたい!」という思いが膨らんでいきました。作ってみたいパンはあるけれど、実際作るにはどうしたらいいのだろう?と話し合いのなかで様々な疑問が生まれていきました。そこで、錦ヶ丘が日頃からお世話になっている天然酵母のパン屋「喜ぶオーガニックベーカリー ひまわり」にバスで訪問し、疑問を解決しに行くことに。
疑問に思ったことを整理し、以下の質問を準備して訪問しました。
1 チョココロネのチョコはなぜ硬くないの?(パンは焼いたら硬まるのに、チョコは柔らかいよね)
2 食パンはどうやって四角い形にするの?(僕達が作ったパンはまるい形ばかりだったけど…)
3 メロンパンの上の(格子状の)模様はどうやってつけるの?
子ども達から湧いてきた疑問は、これまで見たり作ったりした経験を通して生まれたものばかりでした。この子ども達目線の大変かわいらしい疑問に対して、ひまわり工房の森さんは実際に使う調理道具を使ってとても丁寧に教えてくださいました。プロの言葉や作る様子に子どもたちは釘付け。最後にお土産のパンも話し合って選び、購入しました。知りたいことを解決するために行動する経験ができた今回の園外保育は子ども達にとっても大冒険のひとつとなりました。
【3】学んだことを実践する
その後、メロンパンを作りました。実際に見聞したことが子ども達にとってはしっかりとイメージとして残っており、見せていただいた生地の包み方をしっかり再現していました。「自分たちもパン屋さんのようにおいしいパンが作れる!」と自信や誇らしさをも感じている様子でした。
まだまだ続くよ、「パン」プロジェクト!
子ども達一人ひとりが主体的に頭や身体を使う「ホンモノ」の活動。経験を通して得られた満足感や充実感は、さらなる活動への意欲を生み出します。
プロジェクト保育は、子ども達の経験や生まれる疑問どんどん広がりや深まりを増していく点が保育者にとっても楽しさを感じるところです。次回は、パン作りの経験が、保育の中心である「遊び」にどうつながっていくのかをお伝えしていきます。 文責:椎屋
参考・引用文献 『増補 自由学校の設計』著者:堀 真一郎 出版社:黎明書房