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2019.09.12

ブログ

主任だより 科学する心&園内研修

廊下を歩いていると、何やらビニールを持って走る子どもの姿がありました。

よく見るとビニールの裏側にスズランテープを付けて、それを手に走っています。

走りながら時折ちらちらと後ろを見て、ビニールの様子を確かめていました。

「何してるの?」と聞くと「タコ作ったんだけど、飛ばない」と。昨年の1月に、作りたい子達と凧を作ったことがあります。その記憶が蘇ったのでしょうか、そのビニールは確かに形は凧でした。

風を受けてしっかり飛ぶ構造にするには、4歳児だけでは難しいでしょう。ここで作ってあげるのは簡単ですが、「そもそも何故タコって空を飛ぶのかしら」という疑問につながる予感を感じ、担任もあえて見守っていたようです。

「ねえー先生!タコ飛ばない!」

と二人は部屋に戻り、担任に助けを求め始めました。

「どうして飛ばないんだろうね」

担任は一緒に考える姿勢を見せます。担任が考える様子を見せると、二人も一緒になって考えて

「う~ん、風が吹いてないから?」

と答えていました。風が吹くと物が飛ぶ、という事を今までの遊びや経験の中で知っているのですね。

風が吹く日も外で遊んだり、風によって揺れるカーテンに気付いて声を上げる子ども達を温かく見守ったり、紙飛行機を自由に飛ばせるよう環境を整えたり、「きもちいい風がふいてるね」と呟いたりと、保育士側の子ども達が気付かないようなさりげない意図の積み重ねが、このように実を結んでいくのだと思いました。

 

さて、しばらくして廊下に戻ってくるとこんな光景が見られました。

 

どうやら、袋の中に空気を入れたら飛ぶのでは?と思ったようです。

風船で遊んだこともあるので、そこからの着想でしょうか。

結果はもちろん…思うように飛びませんでした。

目に見えないものにも重い(飛ばない、浮かない)軽い(飛ぶ、浮く)がある、風を受けて飛ぶ形、構造がある…などなど、凧作りには科学がいっぱいです。

担任からあえて答えを教えなかったことで、考えたり、予想したり、工夫したり、試したりと諦めずに取り組んでいました。

これこそ、「遊びは学び」です。幼児期の学びは、毎日の遊びや生活の中で体験を伴って得ていくものなのです。

 

 

 

 

さて、先月末8月31日に、7回目の園内研修を行いました。

今回の園内研修の内容は「保育の話し合い」

改めて、現在の保育の中で疑問点はないか事前に聞き取りを行い、そこで出た疑問を中心に話し合いを行いました。

 

まずは、これまで職員が参加した研修の報告会を行い…その後、本題の話し合いへ。

 

↑話し合いの様子。

 

話し合いでは、非常に活発な意見の交わしあいが見られました。

保育の中でも子ども同士の対話を大事にしていますが、大人同士の対話も保育園という組織が、子どものために運営される為には必要であると改めて思いました。

日々の中では、なかなか職員全員でまとまった時間を作りづらいため、園内研修の時間はたいへん貴重なものとなっています。

今回も保護者の皆様のご協力のおかげで、話し合いを行う事ができました。本当に、ありがとうございました。

話し合いの内容を、一部ご紹介致します。

 

★外の水道の使い方

Q.数年前には決まり事があったが、最近は保育の仕方が変わり、子ども達の使い方が変わってきた。何かルールは決めておいた方が良いのか?

現在の仕様用途:砂場で水遊びをする際に使う、綺麗な色水や見立て遊びのお汁を作りたい時に水道から取ってくる

飲み水に使う、未満児たちの手洗い・足洗いに使う、未満児が水の流れや感触を楽しむ時に触れている…etc

 

A.

・子どもの意図や保育士の意図がある状態なので、自由に使って良い。

・しかし、飲み水に使うこともあるので泥を直接流すのは水道が詰まるためやめた方が良い。

 

 

★子ども主体の保育をする中で、誘導的になっていないか?

…1つの答えに確定できる議題ではないので、この議題のテーマは「選択肢のひとつとして他保育士の考えを知る」となりました。

 

Q.そうめん流しをすることになり、子ども達にそうめんの受け皿をどうするか問いかけると、いつも足洗いに使っているタライでよいと言った。衛生面を考えて、綺麗なボウルを提案したかったが、保育士の意見をそのまま言うと主体的に考える機会を奪ってしまうと思い、様々な問いかけをしながらボウルにたどり着いた。誘導になっていなかったか、とその日保育を振り返る中で思った。

A.

・年齢によって声かけの内容を変えるのがいいのだと思う。ヒントは必要。ボウルかタライか…と選択ができる状態に整えてもよい。

・Iメッセージを使う「私はもっと綺麗なものを使ったほうがいいかなと思うんだけど……どうしよう?」

 

 

Q.現在、みかんが実っているがまだ青い。黄色いみかんがおいしいというのは分かっている様子だが、青いみかんでも酸っぱいからおいしいと3歳児は何度でも取りに行こうとする。おいしいというより食べたいという気持ちが強いようだ。

A.

・実際に保育士も一緒に食べてみて、本当に美味しかったら一緒においしいね知らなかったというし、酸っぱかったら酸っぱいねと言って黄色いみかんを買ってきて「私の知ってるおいしいみかんはこれだった」と食べ比べする。

・お店の黄色いみかんを買ってきて、青いみかんと食べ比べする。

・食べたいだけ食べて、食べ頃になったころに「こっちの方がおいしかったね。来年は待とう」

・5歳児は去年甘いみかんを食べた経験があり覚えているので待てる。3歳児は経験がないので食べてしまう。いっそすべて食べてしまって、食べごろにあまり食べれず「どうしてなかったのか」と考えるタイミングが作れると考えたら良いのでは。

・3歳児が何カ月も後の食べごろの時期に自分たちが食べつくしたことや、酸っぱかった味を覚えているだろうか。手が届いて取れる部分だけは青くても保育士が量は調整しつつ食べても良いのではないか。

 

 

★Q.子どもが望ましくない行動をした時に話をしたいがどのように話をするのが効果的か。

…この議題に関しては、保育士が研修や読んだ本、論文などから得た知識を交換する形となりました。

詳細については、ブログで徐々に発信していけたらと思っています。

A.

・叱るはなし。感情的にならない。

・Iメッセージ 例:「〇〇をすることで回りのお友達が迷惑に思っていたよ」

・消去と強化  望ましくない行動は消去(計画的無視)していって、いい行動は強化していく(認める、分かち合う)…応用行動分析学より

…他者から注目を得ることで繰り返される問題行動に効果的と言われています。

例:話し合いをしている最中にわざと隣の子を叩いたりつついたりして注目を集めようとする子どもに対して、過度に声をかけず表情や視線も変えず冷静な姿のまま、そっと子どもの手を抑えたり、場所移動の誘導をしたりする。

・アンガーマネジメント。六秒自分で数えて、落ち着いて話しかけられるようにする。

・話す5段階を指で数えながら落ち着いて話せるようにする。

例:①「〇〇くん、ちょっといい?」…こちらを向いてもらう ②「〇〇してほしいの」…簡単に。 ③「〇〇したら私、とっても嬉しいわ。or〇〇したら、お外に遊びに行けるわ」…することで起きる良いことを分かりやすくする ④「〇〇くん、いつもできてるものね」…自信を持たせる ⑤「じゃあ、見てるからね。or一緒に手伝うから、やりましょうか」…励まし

・子どもは楽しい方を選ぶ。道徳的に教えるより、選んだほうが良いことがあると想像できるとよい。それに、道徳的な意味づけ、プラスのフィードバックを保育士側がしてあげる。

例:「玩具、貸してあげたの。優しいね、〇ちゃんも嬉しいって。」

・共感、代弁

例:「〇〇が嫌だったのね。だから叩いてしまったの」

・アドラー心理学 「私が言ったことをしてくれて“ありがとう”」

 

 

「これはダメ、あれは良し」と1つの答えを決めるのではなく、保育所保育指針と子どもの発達の知識を軸にして、子どものために柔軟な保育士でありたいと思います。

この機会にと、様々な議題が出たため、今後も職員会議で少しずつ話し合っていくこととなりました。

子ども主体と言いましても、すべてに子供に任せきりにするわけではありません。

また、臨機応変さ柔軟さは必要ですが、行き当たりばったりになるのも違います。

ですので、こういった話し合いの機会に、保育について具体例を交えて話し合い、擦り合わせる機会は、意図ある保育を行っていくために非常に有意義な時間でした。

重ね重ねになりますが、ご協力いただき、ありがとうございました。

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