もも組 さくら組 『かずの木』で出会う数量の世界

園の活動の3本柱の1つに、童具の活動があります。

今回は、童具のなかでも、「かずの木」をつかった活動の様子をお伝えします。

 

◆かずの木とは

数量学とアートが融合した童具のひとつで、

積み木遊びを楽しみながら

「数量の秩序」と「美」の関係を感じ取っていけるようにと、

和久洋三氏によってつくられました。

下の写真の1から10までの大きさを表すブロック以外にも、

3種類の大きさの皿、サイコロ、カラービーズスティックなど

が含まれています。

 

左下の白い2㎝の立方体を基本単位の1としており、

ブロックの大きさと穴の数が対応しています。

 

1から10までの大きさのブロックを順に並べると、

立方体1つ分ずつ大きくなっていることが分かります。

 

かずの木を使った、積み木遊びでは

子ども達は意識せずとも

1,2,3という数の順番には、量の増減が伴っていることにも

気付くことができます。

 

 

◆もも組 自由遊び 「お家を作ろう!」

ある日の午後、保育士が並べたかずの木をみつけた子ども達。

「お家をつくろう!」の誰かの声かけに、それぞれ家を作り出します。

よく見ると、柱となる部分を立てる際、同じ大きさのかずの木を選んでいました。

手に取ったブロックが「どれくらい」を表すかを正確に分かっていなくても、

柱の高さが揃うことで、同じ高さ(同じ量)だと感覚的につかんでいます。

 

次の写真は、柱ができたあと、屋根や床部分を埋めている様子です。

床を埋めている時、まずは大きい青のブロックを敷き詰めました。

それでも、まだ空いてるスペースがあったので、少し小さい黄色のブロックを選び、

床部分を埋めていきます。

黄色いブロックを3つ並べれば埋まる!と、気づきましたが、

あと1列分を埋めるために必要な、黄色いブロックがもうありませんでした。

「どうしよう…」としばらくみんな、悩んでいましたが、

オレンジ1つ、白2つを並べてみると ぴったり!

この時、大きさが違うブロック同士を組み合わせても

同じように埋められると、遊びのなかで発見しています。

これが数の合成・分解など数学的なものの見方の基礎にも繋がっていくと考えられます。

 

 

◆ もも組 さくら組 長さレース

2クラスが、かずの木をつかったゲームで一番楽しんでいたのが長さレースです。

7月のおやこふれあいの集いでは、保護者の方々にも一緒に長さレースをしていただきました。

サイコロを2つふって出た目の合計と同じ大きさを表すブロックを繋げて、

ゴールまで先にたどり着いたチームが勝ちというシンプルなゲームです。

かずの木で使うサイコロはいくつか特徴があります。

1つ目は、0の概念の理解につながるよう、目に「0」が含まれている事です。

ゲーム中、0の目がでると、ブロックを置くことはできません。

0の感覚をつかむというはなかなか難しいですが、

「0の目が出た」→「どのブロックも置くことはできない」→「なにもしないまま次の人の番になる」という経験のなかで

0の感覚をつかんでいるように感じます。

 

2つ目は、【黒い点の数で表しているサイコロ】と、【数字で表しているサイコロ】があります。

ある時、もも組の子が、【数字で表しているサイコロ】の方を使っていました。しかし、

出てきた目の「5」という数字が、どれくらいの量を表すのかぴんと来ず、

どのブロックを選べばいいのかわからないという姿がありました。

 

上記したおうちづくりの遊びにもあるように、子ども達は、ブロックを選ぶ際、

「5の長さのブロック!」「7の長さのブロック!」と数を意識してブロックを選んでいるわけではありません。

視覚的にわかる 長い―短い 高いー低い 大きい―小さい などの感覚 (数字や単位等を用いなくても表現できる未測量の感覚)で、

ブロックを選択しています。

つまり、子ども達にとって先に出会う感覚とは数よりも量であるということができます。

 

大人であれば、「5」という数字を見ただけで、「5」=「・・・・・(黒い点5つ分)」だとわかると思います。

この子は、きっと「5」と表される記号(数詞)と、「5という量」がまだ結びついていない段階で、

穴の数を一つ一つ数えながら、数と量を一致させる方がわかりやすいのだと思います。

幼児期のうちに、このような遊びの経験をたくさんすることで、就学前から数量の感覚も体感できるようになっていくようです。

 

 

◆さくら組 かずとりゲーム

さくら組では、2人組のペアで、サイコロを振って、ブロックを100入る皿に埋めていくゲームもしています。

皿は、10×10のサイズのため、1列には10の大きさまでしか並べることができません。

写真の2人は、1列に収まらなかったかずの木のブロックを、別のブロックに置き換えて(分解して)

入れるにはどうしたらいいだろうと考えています。

本来並べたかった緑色のブロックの上に、2種類のブロックを重ねて同じ数量となるかを確認しています。

家づくりの遊びの時よりも、より合成・分解を意識できるゲームです。

確認方法は、まず大きめのブロックを並べる子もいれば、1ずつ増やして並べる子など、様々です。

どれが正解ということもなく、一人ひとりがあそびの延長で楽しみながら数や量に親しんでいます。

 

◆かずの木をするうえで大事にしていること

かずの木の遊びを繰り返すことで自然と

数量についての基礎的・基本的な概念につながる感覚を身に着けることにつながります。

ただ、小学校の学習の先取りをしたいのではなく、

一人ひとりが実際に手を動かすことで

大きいー小さい、多い―少ない、思い―軽い、高い―低い、長い―短いなどを把握したり比較したりしながら

それぞれの感覚や基礎概念をたくさん蓄積していってほしいという願いを込めて活動を行っています。

今のこどもたちで、100まで数えられる子のなかには、

その100という量がどれくらいかを感覚でつかめているわけではなく

ただただ100まで唱えられるという子も多いそうです。

私自身、かずの木に出会うことで、

幼児期のうちに遊びを通して量感覚をつかむことの大切さをとても強く感じました。

小学校では、ノートやプリントに、数式・答えを正しく表記できることで〇になり、計算方法などを理解しているということになりますが、

果たして、それだけで子どもたちの理解度などを判断していいのかと疑問に感じるきっかけとなりました。

くりあがりの足し算、くりさがりの引き算、分数・少数の掛け算や割り算など、具体的に数量のイメージを持てていないと、

和久洋三氏のいうような、数の秩序に見られる美しさに感動することもなく、

単なる数の操作、パターン化された計算方法の丸覚えとなってしまうような気がしました。

園では、かずの木を意識して取り入れながら

子ども達自身の発見やそれに伴う感動を得る機会を

たくさん作っていきたいと思います。

椎屋

 

参考資料

・『童具子育て講座⑧かずの木』和久洋三

・童具館 かずの木のこと

https://www.dougukan.com/text/textpage/text_page_kazunoki1.htm

・『小学校学習指導要領解説算数編』文部科学省