主任だより 生き物に気付く

先日、お隣の錦ケ丘幼稚園の保護者の方からカブトムシの幼虫を頂きました。

掌サイズのぷりっとした大きな幼虫。私自身、アゲハチョウの幼虫を育てた事はあるもののカブトムシの幼虫は育てた事が無いため、まずは私自身が調べるところからスタートしました。この時はまだ、子ども達へは何のお知らせも出しませんでした。

 

何故早々に教えなかったのか…それには、理由があります。

保育士側がすべてを準備し、カブトムシの飼育をスタートするのは簡単です。勿論それでも一定の子どもは興味を示すでしょうが、生まれるかもしれなかった話し合いの機会や、より深い関心を奪いかねません。

いつの間にか部屋に置いてあり、大人から「カブトムシの幼虫だよ、お世話してね」と言われるよりも、事前にじっくり観察したり調べたり、話し合ったりした方が、カブトムシへの幼虫への気付きや愛着が生まれることでしょう。

 

もちろん、保育士側が何の下調べもせずに「カブトムシの幼虫もらったよ。どうしようか?」と子ども達に問いかけることもよくありません。一見、子どもの主体性を尊重しているように思えますが、子ども達の結論や決定が常に適切であるとは限らないからです。特に今回は、生命に関わることですから、慎重になる必要がありますね。

 

子どもの主体性が大事だと言われるようになって暫く経ちますが、「子どもが決めたから」「子どもが言ったから」とすべてを子どもに依存する保育をするのは適切ではないと常々思っています。かと言って、保育士側がすべてを決めてしまっては主体性に欠きます。

大切なのは、子ども達の結論や決定が常に適切なものではないと保育士側が理解していることです。トライ&エラーこそ子どもの気付き・学びに繋がる活動であれば、あえて見守ってもいいでしょう。そうでなければ、保育士側からのさりげない言葉で結論に至るまでの道筋を整えることも大切です。

そのためには、保育士が活動(遊び)のねらい(育ってほしい姿)を明確にすること。そして、その活動(遊び)の知識を持っておくこと。も重要です。

 

例えば、今回のカブトムシ。

大きなねらいは「身近な生き物に気付き、親しみを持つ」です。これは、厚生労働省より告示されている「新保育指針」の「環境」に含まれているねらいです。

そもそも虫が大好きな子が多いので、図鑑や絵本でカブトムシの存在も知識として知っています。春頃に、アゲハチョウの幼虫を見守った経験もあり、その際は羽化が失敗して死んでしまった経験をしたこともあります。

今回は、カブトムシの幼虫を目の前で見ることで、その大きさや動きなどを直接的に体験し、命をもつ生き物としてのカブトムシを認識してほしいと思いました。こういった経験が、豊かな人間形成や思考力、好奇心等々の基礎となっていきます。

 

下調べを済まして、土曜日の夕方、餌となる土を入れ替えるべく外で衣装ケースへのお引越し作業をしていると(本当は平日の午前中にあえて子ども達に見せながらしたかったのですが、連休そのままにしておくのが不安だったのでやむを得ず土曜日の夕方に…)

通りがかった子どもや帰る間際の子どもが、早速興味を持って寄ってきました。一緒に温かく見守ってくださった保護者の皆様、ありがとうございました。

説明すると、土を食べるのだとすんなり理解して、「ここにもいた」「あと何匹いるの」「この黒いのがうんちなの!?」と盛んに発せられる言葉。スコップで土を掘って探していたので、「傷ついて痛い思いをしそう」「優しく掘ろう…」と呟くと、一緒に見ていた5歳児も、息を飲んでいました。「優しくしてね」と言うよりも、保育士側が優しく扱う姿を見せた方が効果的なことがよくわかります。

 

週が明けて、園庭にお引越しした衣装ケースを出しました。

集まってきた3歳児たちに簡単に教えると、覗き込んでどこにいるかと探していました。

最初は、持ってきたスコップで掘ろうとしていましたが、声をかけて止めてからそっと掘って幼虫を見つけ出して見せると、むやみに突くこともせずじっくりと見守っていました。深く潜っていない時は、幼虫の動きに合わせて土の表面もモコモコと動きます。「土が動いてる!」「動いているところに、幼虫がいる」と、幼虫の特性を発見していました。

土曜日の夕方、お引越し風景を見ていた子が他の子に、「この黒いのがうんちだよ」「ほら、お尻にうんちが入ってる」と教える姿もありました。

 

文部科学省より「学校における望ましい動物飼育のあり方」という冊子が配布されています。

幼児の項目に、

「3~4歳児は、特に自己中心的な思いが強く、生き物の動きを試し、オモチャのように見立てて遊ぼうとする。このような場合には、教師が小動物の気持ちを代弁する必要もある。

人間の幼児は、小動物にとってはライオンのように思えることを説明してあげたり、教師も共にやさしくかかわったりして、幼児の小動物へのかかわり方を援助していく」

とあります。

フォローするアドバイザーとしての役割も、やはり保育士には必要なのですね。

 

現在、カブトムシは3歳以上児クラスに1匹ずつお世話をお願いしています。

掌に乗せた子は「大きい…」と思わず呟いていました。初めての体験だったので、今回は「糞が増えてきたら除いてください」「土が乾いていたら水を少しかけてください」「痛い思いをするので見るだけにしてください」と子ども達にお願いしました。5歳児は、アゲハチョウの幼虫を育てた経験から糞を除くことは知っており、教える前から自信ありげに言っていました。

 

今のところ、最初に幼虫を迎えに来た子達を中心にお世話をしています。

担任が気にかけて子どもにさりげなく声をかけたり、子ども同士で「ここに幼虫がいるんだよ」と教えあったりすることで、危惧していた放置状態もない様子で一安心です。

→「土は15cmいるんだって」と定規と一緒に渡すと測りながら土を入れていました。

 

→「カブトムシの幼虫がいるんだよ」「ももさん(名前を付けたのでしょう)だよ」